2 未公開株商法の違法性
未公開株商法の違法性の本質は,無価値のものをあたかも価値のあるものとして,また,今後その価値がより一層上がるものとして販売するところにあるが,未公開株商法においては「対価の不均衡」は推定されるべき事柄であって,仮にそうでないというのであればそれは業者が反証するべきである。東京地判平19・11・30は,旧証券取引法およびグリーンシート銘柄規制の趣旨をより詳細に指摘したうえで,「(未公開株商法業者の)代表取締役又は取締役として同社の営業に関与していたと認められる被告らとしては,本件未公開株の販売価格が正当なものであったことを積極的に立証しない限り,本件取引当時における本件未公開株の正当な価格は,もともとその代金額を大きく下回るものであり,その販売価格は,顧客がそれを正当な価格であると誤信することを前提とした詐欺商法によるものであったことが推認されるというべきである」と判示している。
株式取引は,それが売買であろうと仲介であろうと,対象が上場株式であろうと未上場株式であろうと,営業として行うためには証券会社登録を要する。未公開株商法は,証券業(その定義は金商法2条8項(旧証取2条8項))を内閣総理大臣の登録を受けることなくする無登録営業であって,金融商品取引法29条(旧証取28条)に反する(金商198条1号(旧証取198条11号))により,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金刑またはこれらの併科)。
なお,証券業について登録を要するとされている趣旨は,資産的は基盤を有しない業者による証券業を禁じ,投資者が不測の損害を被ることのないようにし,証券会社一般に対する社会的信用の向上を期するところにある。また,法が刑罰をもって無登録営業を禁じているのは,有象無象の者らが証券取引まがい行為を行い,証券取引法,金融商品販売法その他の規範を犯してする一般消費者に対する詐欺的勧誘をすることのないように規制するための最も基本的な前提として設けた規律であり,これに反して行う証券取引まがい行為は,私法上も違法であるというべきである。
旧証券取引法およびグリーンシート銘柄規制の趣旨から未公開株商法が詐欺商法であると推認されるとする裁判例として後記東京地判平19・11・30,同旨から公序良俗に反する違法な取引であるとする裁判例として同東京地判平19・12・13がある(「(証券取引)法が,国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため,有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ,且つ,有価証券の流通を円滑ならしめることを目的として制定され(証券取引法1条),同法28条違反については,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し,又は併科という罰則を規定していること,日本証券業協会が,未公開株式の取引が同法の目的に反するおそれがあるため,いわゆるグリーンシート銘柄以外の未公開株式の取引を自主規制していると解されることに照らすと,無登録業者によるグリーンシート銘柄以外の未公開株式の売買は,それ自体極めて違法性が高く,公序良俗に反する違法な取引であるというのが相当である)と判示している)。
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誰を信じればいいのか分からない−劇場型社債詐欺商法の蔓延−
平成22年1月,一人暮らしの女性のところにSという会社の社債の購入を勧誘するパンフレットが送られてきた。1口10万円で,年12パーセントの利息が付くという。彼女は関心を持たずに放置していたが,あちこちからSの社債を買いたいという電話がかかってくるようになった。1口30万円で買いたいという。金融庁や国民生活センターを連想させる名称を名乗って被害調査をしているという電話もかかってくる。パンフレットが送られてきていないかと聞くので社名を告げると,「Sなら大丈夫だ,当局としても優良企業だと考えている,あそこの社債を買えるなんて奥さんは運が良い,本官も職業上の制約がなければ是非とも欲しいところだ」などというのである。ばかばかしい話だが毎日毎日同じような電話がかかってくると,「ひょっとしたら」という思いも頭をもたげてくる。
うっかりその気になって100口買ってしまったところ,「買取屋」は,120口でなければ買い取れないなどという。さらに200万円を出して120口にして「買取屋」に電話をすると,150口分でないと買い取れないといい出し,話が違うじゃないかと問い詰めたり,もうお金はないとすがりつくと,「あんたのせいで150口も買いたいという大口顧客との契約が潰れてしまう,どうしてくれるんだ」などと怒り出す始末である。
途方に暮れていると,「NPO法人」から被害救済をするから金を出せという電話がかかってくるようになり,挙げ句には法律事務所を名乗る者からも金を払えなどという電話がかかってくる。そのうちSや「買取屋」には電話も繋がらない状態になる。
こういう,「次々社債等販売商法」,「劇場型社債等販売商法」とも呼ぶべき「振り込め詐欺」の亜流のようなものが急激に増えている。こんなものは「投資」の名に値しない詐欺商法であるが,「投資」と「詐欺商法」の区別は誰でもいつでも簡単にできるというものではない。「詐欺には引っかからない」と自負していた人が老後の生活資金を奪われてしまったという相談が,毎日のようによせられている。
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