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未公開株商法・社債まがい商法

1 被害の概要

 未公開株式(取引所に上場されていない株式(未上場株式)であって,店頭取引もされていない株式)を,上場間近であるなどとして高額で販売する未公開株商法は平成17年夏ころからその被害の報告が急激に増加している。
 いくつかの刑事摘発事例が報道されているが,被害の減少傾向を見ることはできず,かえって,「株式公開準備室」などと称する外部には独立した組織としては現れない「別組織」が「自社株」として未公開株式を勧誘・販売し,第三者を名乗って高額で買い取りたい旨告げる電話をかけるなどして誤信を強めさせるなど,振り込め詐欺商法まがいの劇場型詐欺商法として被害が拡大している。このまま組織の実態を探知できずに違法収益を残存させたままにしておくと,さらに被害の増加傾向を強めることになると懸念される。

2 未公開株商法の違法性
 未公開株商法の違法性の本質は,無価値のものをあたかも価値のあるものとして,また,今後その価値がより一層上がるものとして販売するところにあるが,未公開株商法においては「対価の不均衡」は推定されるべき事柄であって,仮にそうでないというのであればそれは業者が反証するべきである。東京地判平19・11・30は,旧証券取引法およびグリーンシート銘柄規制の趣旨をより詳細に指摘したうえで,「(未公開株商法業者の)代表取締役又は取締役として同社の営業に関与していたと認められる被告らとしては,本件未公開株の販売価格が正当なものであったことを積極的に立証しない限り,本件取引当時における本件未公開株の正当な価格は,もともとその代金額を大きく下回るものであり,その販売価格は,顧客がそれを正当な価格であると誤信することを前提とした詐欺商法によるものであったことが推認されるというべきである」と判示している。
 株式取引は,それが売買であろうと仲介であろうと,対象が上場株式であろうと未上場株式であろうと,営業として行うためには証券会社登録を要する。未公開株商法は,証券業(その定義は金商法2条8項(旧証取2条8項))を内閣総理大臣の登録を受けることなくする無登録営業であって,金融商品取引法29条(旧証取28条)に反する(金商198条1号(旧証取198条11号))により,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金刑またはこれらの併科)。
 なお,証券業について登録を要するとされている趣旨は,資産的は基盤を有しない業者による証券業を禁じ,投資者が不測の損害を被ることのないようにし,証券会社一般に対する社会的信用の向上を期するところにある。また,法が刑罰をもって無登録営業を禁じているのは,有象無象の者らが証券取引まがい行為を行い,証券取引法,金融商品販売法その他の規範を犯してする一般消費者に対する詐欺的勧誘をすることのないように規制するための最も基本的な前提として設けた規律であり,これに反して行う証券取引まがい行為は,私法上も違法であるというべきである。
 旧証券取引法およびグリーンシート銘柄規制の趣旨から未公開株商法が詐欺商法であると推認されるとする裁判例として後記東京地判平19・11・30,同旨から公序良俗に反する違法な取引であるとする裁判例として同東京地判平19・12・13がある(「(証券取引)法が,国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため,有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ,且つ,有価証券の流通を円滑ならしめることを目的として制定され(証券取引法1条),同法28条違反については,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し,又は併科という罰則を規定していること,日本証券業協会が,未公開株式の取引が同法の目的に反するおそれがあるため,いわゆるグリーンシート銘柄以外の未公開株式の取引を自主規制していると解されることに照らすと,無登録業者によるグリーンシート銘柄以外の未公開株式の売買は,それ自体極めて違法性が高く,公序良俗に反する違法な取引であるというのが相当である)と判示している)。

column
誰を信じればいいのか分からない−劇場型社債詐欺商法の蔓延−
 平成22年1月,一人暮らしの女性のところにSという会社の社債の購入を勧誘するパンフレットが送られてきた。1口10万円で,年12パーセントの利息が付くという。彼女は関心を持たずに放置していたが,あちこちからSの社債を買いたいという電話がかかってくるようになった。1口30万円で買いたいという。金融庁や国民生活センターを連想させる名称を名乗って被害調査をしているという電話もかかってくる。パンフレットが送られてきていないかと聞くので社名を告げると,「Sなら大丈夫だ,当局としても優良企業だと考えている,あそこの社債を買えるなんて奥さんは運が良い,本官も職業上の制約がなければ是非とも欲しいところだ」などというのである。ばかばかしい話だが毎日毎日同じような電話がかかってくると,「ひょっとしたら」という思いも頭をもたげてくる。
うっかりその気になって100口買ってしまったところ,「買取屋」は,120口でなければ買い取れないなどという。さらに200万円を出して120口にして「買取屋」に電話をすると,150口分でないと買い取れないといい出し,話が違うじゃないかと問い詰めたり,もうお金はないとすがりつくと,「あんたのせいで150口も買いたいという大口顧客との契約が潰れてしまう,どうしてくれるんだ」などと怒り出す始末である。
 途方に暮れていると,「NPO法人」から被害救済をするから金を出せという電話がかかってくるようになり,挙げ句には法律事務所を名乗る者からも金を払えなどという電話がかかってくる。そのうちSや「買取屋」には電話も繋がらない状態になる。
 こういう,「次々社債等販売商法」,「劇場型社債等販売商法」とも呼ぶべき「振り込め詐欺」の亜流のようなものが急激に増えている。こんなものは「投資」の名に値しない詐欺商法であるが,「投資」と「詐欺商法」の区別は誰でもいつでも簡単にできるというものではない。「詐欺には引っかからない」と自負していた人が老後の生活資金を奪われてしまったという相談が,毎日のようによせられている。

3 社債まがい販売商法等劇場型詐欺商法への転向

 未公開株商法は,株式公開準備室を名乗る組織が上場を云々する態様から,第三者を名乗る「買取り屋」が購入価格の3倍から5倍で買い取るなどというあからさまな虚言を弄するものに急激に変容し,登場する者も行政の関係機関を連想させるような名称を名乗ったり,被害調査をしているなどとして電話をかけてくるなど,「劇場型」詐欺商法の様相をいっそう色濃くしている。
 また,このような商法の変容と時期を同じくして,株式に代わって社債(無担保普通社債や転換社債)の販売に藉口する商法が急増している。これは,業者にとって,未公開株商法が詐欺商法であるという広報に一定の効果が生じているが社債はこれとは異なると見せかけることができること,定期的に高利の利息を支払うという勧誘のしやすさがあること,騙取した金員から「利息」を支払うことにより被害の顕現を遅らせることができること,償還期限が来るまで償還の義務はないなどと強弁する余地があることなどが認識されているからであると考えられる。この種業者は特に口座変更を頻回にし,口座の使用停止も迅速にする傾向が強い。可能な限り関係者を探知した上で迅速に法的手続を採る必要性が高い。
 平成22年末ころには,イラク・ディナールであるとか,スーダン・ポンドなどの外国の通貨を上記手法で売りつける手口が蔓延し,平成23年初めころからは合同会社の社員権を上記手法で売りつける手口が蔓延し,被害者が以前に遭った被害の回復をするのと引き替えに新たな社員権などの購入をさせる「被害回復仮装型」,「2次被害商法」とでもいうべき手口も急激に増加している。平成23年末ころからは,口座振り込みによる方法ではなく,直接被害者宅に現金を受け取りにくるという大胆な手口が急激な増加傾向を見せ(被害者宅で張り込んで詐欺業者を取り押さえるなどしたことがある),販売するものもリゾート会員権(が付加された何らかの権利),水源地の権利の持ち分(という訳のわからない代物)であるとか,医療機関債,病院債などと,多様化している。
column
高齢者の社会問題への「意識」を嗤う−エコ関連投資被害−
 「社会的責任投資」という言葉がある。企業の社会的責任の履行状況によって投資を決めることを意味し,古くは教会が反教義的産業に投資しないという姿勢を示したことに始まり,ベトナム戦争時には兵器等関連産業に投資をしないことによって反戦運動に参加する意味合いをもって広まった。途上国の商品を中間マージンのない態様で売買しようというフェアトレード,環境に配慮した消費生活行動をしようという環境配慮型行動と併せて,いわゆる「社会的価値行動」と呼ばれる行動群であり,市民が消費行動を通じて積極的に社会参加をしていこうという「消費者市民社会」における消費者行動の中でも大きな意義を持つものであるなどといわれることがあり,特に北欧諸国では広く社会に浸透しているとされ,我が国においても,市民の社会参加のあり方の一つとして関心が高まっている。
しかし,投資を行うことが社会的責任を果たすことに繋がるというのは,誤った強調のされ方をすることがあるし,社会に貢献したいという健全な欲求を持つ一般市民がその意識故に詐欺的被害に遭うきっかけともなることがある。ここ1,2年の間に,廃プラスチックから油を作り出す事業をしている会社の株式を買わないかとか,酸素供給マシーンをホテルにレンタルする事業をしている会社に投資するファンドに出資しないかとか,二酸化炭素の排出権価格を差金決済指標にして先物取引類似取引をしてみないかとかといった,「環境問題」に関連付けた投資勧誘が急激に増加しているのである。現在もっとも被害の多い詐欺商法は未公開株商法であるが,その対象「銘柄」のほとんどがエコ,環境問題に関連する事業を行っていると称する組織が発行したものになっている。
 エコにせよその他の社会的価値にせよ,それが投資の話と結びつくときには,高邁な意識とは無縁の甘い利益の話に墜ちることが往々にしてある。環境問題への意識は投資を通じて示されるのが健全であるとは思われない。一般市民が「投資」という形を取って社会参加・社会貢献をしようとするときには,「社会参加の意識」がリスク判断を曇らせていないかを冷静に考え直してみる必要がある。

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