(2)断定的判断の提供
断定的判断の提供とは,投機的取引の勧誘を行う者が,被勧誘者ないし顧客に対して,利益を生ずること,あるいは,損失を取り戻せることが確実であると誤解されるような断定的な判断を提供して,受託を受けることをいう。
(3)説明義務違反
投機的取引の勧誘者は,取引の勧誘にあたって,取引の仕組み,危険性等について,被勧誘者の理解力に応じた説明を尽くす義務がある。個別取引の勧誘を行う場合には,当該取引に係る商品についても,その価格変動要因等を具体的かつ正確に説明しなければならない(合理的根拠の法理)。
投機的取引の危険性,理解困難性その他の特性に照らし,勧誘者は,被勧誘者に対して,上記説明事項について,被勧誘者の理解力等に応じて,被勧誘者が理解できるまで十分説明を尽くす義務があるというべきである。このことは,説明が,顧客の理解のためになされるものであり,当該顧客の理解を得られてこそ意味があるものであることからして,当然である。諸規定において,「告知」すべきものとされているのではなく,「説明」すべきものとされているのはこの趣旨と解される。
(4)新規委託者保護義務違反(取引の数量的過当性)
投機勧誘者は,被勧誘者に対し,真に自己の相場判断に基づく注文をなしうるような知識,経験を蓄積させ,保護,育成し,十分な自主的判断がなしうるまでに不測の損害を被らせないように建玉を抑制する義務を負う。
(5)無断売買,一任売買
無断売買が違法性を有することは当然であるが,一任売買は,顧客自らシビアな判断をして具体的な注文をするのでなければ,顧客が,投機的取引をすることの困難さ,危険性を身を以って実感し,取引についての実のある知識経験を得ることができず,新規委託者保護育成義務の趣旨に反すること,取引が,しばしば顧客の利益と対立する業者の従業員に一任されると,過当売買,頻繁売買その他,顧客の利益を害する取引がなされる危険性が高いこと,顧客の自由な意思が取引に反映されず,市場における公正な価格形成をも阻害すること等から,違法である。
(補)高齢者は「私は何も聞いていない,業者が勝手にやったのだ」と訴えることも多い。しかし,このような訴えに軽々に乗るのは不適切である。この種訴訟での敗訴事案の多くは,無断売買の主張に拘泥したところに起因する。
(6)過当な頻繁売買,特定売買等
高率の手数料が設定されている現状においては,反復売買は,委託者に対して,委託金額の大部分を手数料として失わせる危険を負担させることになる反面,商品取引員等が,委託者の犠牲の下に多額の手数料を得ることになるから,商品取引員等には,短期間に頻繁に売買することを勧誘し,あるいは,無意味な反復売買をしない注意義務がある。
無意味な反復売買がされたかどうかは,下記の数値を検討することが有益である。 |
| column |
金地金の購入なら安心?−真意を隠した「おとり広告」−
「金(きん)」は,いわば普遍的な価値があり,その保有は老後の生活の不安を解消してくれる助けともなるだろう。しかし,だからこそ,「金の魔力」は,古くから詐欺商法に利用されてもきた。豊田商事が行った金のペーパー商法がその代表的なものだが,ほかにも,金の私設市場取引であるとか,最近ではロコロンドン金取引など,途絶えることがない。
現実に金地金(きんじがね)を購入しようとしても,普通の買い物のように簡単にはいかない。金地金を先物取引を行っている会社から購入する場合には,よりいっそうの注意が必要だ。金地金を持ってくるという口実で訪れてきて執拗な勧誘をする例が頻発しているし,金地金は重たいから1度には持って来れないなどと言って何度も押しかけてくることもある。もっとひどい場合には,金地金を持ってくるというから来訪を許したのに,金地金は先物取引の証拠金に充用したら良いと思って持ってこなかったなどと勝手なことを言い,あたかも金地金を買った人は先物取引をするのが当然だとでも言わんばかりに先物取引の勧誘を始める外務員もある。
金地金の購入は,類型的に貯蓄性向の高い人がする行為である。にもかかわらず,先物取引の勧誘に繋げようとするというのは,明らかに顧客の投資に関する意向に反するものであり,違法な行為だが,このような勧誘が増えているのは,先物会社が訪問・電話による典型的先物取引の勧誘を法令で厳しく制限されることになったからである。「勧誘受諾意思確認義務」とか「不招請勧誘の禁止」などの規制が導入され,また,いきなり先物取引の勧誘をすると警戒されてしまうこともあって,先物会社は,金地金の購入などの広告をいわば「おとり広告」として出しているのである。
「おとり広告」には,金地金のほかにも様々なものがある。経済に関する書籍を無料でプレゼントするなどという広告を見て問い合わせをすると,外務員が書籍を持参すると言って聞かなかったり,経済評論家などのセミナーに無料で参加できるという広告を見て出かけると,なかなかただでは帰してくれない。こうして,凄まじい勧誘の端緒が作られるのである。
|
|