3 「ロコ・ロンドン貴金属取引」の仕組自体の違法性
上記のような取引は、それ自体が存在を許されないものであるといわなければならない。このことは、直感的にも、海外市場において外国通貨建てで何らかの取引を行ったものと仮定し、これにレバレッジを掛けた取引を任意に創出できることになれば、外国為替証拠金取引に対する規制は全く空文化することになってしまうことや、国内の先物取引の類似取引が禁止され、相場による差金の授受が禁止され、海外先物のノミ行為が禁止されている趣旨が全くおかされてしまうことを考えれば容易に理解しうるものと思われる。
「ロコ・ロンドン貴金属取引」は、賭博として刑事罰を以て禁止される行為を、あたかも何らかの真っ当な金融商品取引であるかのような外観を生じさせて、高率の手数料を徴求し(貴金属の価格で利ざやを得ようとする取引をしたいというのであれば法律で整備された国内の先物取引を行えば足りるのであって、手数料も本件取引の方が割高である)、一方的に証拠金を徴求し(保全の措置が法律上整備されているわけではないから利益金はおろか証拠金でさえ返還される保証はなく、現実に平成17年には外国為替証拠金取引業者の多くが証拠金を返還することなく破綻したことは記憶に新しい)、差損益計算に大きな影響を及ぼす差金決済指標である外国為替及び金現物価格を一方的に業者において決定することとして(なお、業者が顧客に著しく不利益なにレートを設定することによって顧客の証拠金を不当に消滅させていた事例も確認されている)、業者において業として、図利目的で、常習的に行われるものであり、そのようなものであると聞かされれば通常人でればこのような取引を行うとはおよそ考えられない「いかさま賭博」、「詐欺賭博」とでもいうほかはないものであるから(したがって、取引の実際を明らかにしない詐欺的勧誘が不可避的に生じる)、これをあたかも何らかの真っ当な金融商品であるかのように誤信させて一般消費者を勧誘してこれを行わせて証拠金等名下に金銭の交付を受ける行為は、公序良俗に著しく反し、私法上も不法行為を構成させるに十分な違法性を有するものであるというべきである。
日弁連も、平成19年3月16日付でいち早く、このような商法の仕組自体を違法とする「『ロコ・ロンドン金取引』商法の被害に関する意見書」を採択し、各地の弁護士会も同旨の意見書等を採択しているところである。
4 特定商取引法の適用
ところで、平成19年7月15日施行の特商法施行令は、「ロコ・ロンドン貴金属取引」を指定役務として特商法の規制に服させようとしている。もっとも、原状回復義務は法人としての業者のみにしか生じないことなどにより、現在我が国で急増の傾向を見せているこの種取引をクーリング・オフなどによる簡易な被害回復手続きによって救済することには様々な困難も予想される。筆者の個人的感覚では、同法の利用によってはこの種商法に適切には対応できない。 |
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高い「利息」はだれが払う−貴金属まがい取引の跋扈−
海外で金の取引をすれば年20パーセントを超える高い「利息」が付く。このような文言で勧誘される金融商品まがい取引が一昨年から急激に被害を拡大させた。ロコロンドン貴金属取引であるとか、貴金属CFD取引などと呼ばれる、「店頭商品差金決済取引」である。「利息」であるとか「利回り」等という言葉が用いられると、価格変動リスクを負担せずにその利息等の利益を享受することができると錯覚してしまうところに目を付けた商法である。
海外通貨のほとんどは円よりも金利が高いから、海外通貨建てで何かを売ったとしてその対価として海外通貨を得ることになる取引をしたこととすれば観念上「利息」が生じることとなり、この取引に高いレバレッジ(倍率)をかけることにすれば、形式的には、年率20パーセントでも、100パーセントでも、「スワップ金利」と呼ばれる「金利差の交換として生じる金利様の対価」が生じるかのような金融商品らしい取引を作り出すことができる。ここから、「高金利」を売り言葉にする商法が発生し、急激に被害を拡大させたのである。
しかし、何か(例えば貴金属)を売るといっても、実際には投資家が貴金属を持っているわけではなく、売買はあくまで仮想のものである。仮想の取引であるから、「売買益」や「利息」は、実際には生じない。売買益や「利息」を顧客に支払うには、業者は自腹を切ることになる。反面、顧客が「売買損」を出せば、それが業者の収益になるのである。
このような取引では、顧客が利益を出せば出すほど自社の資産が減っていくのであるから、業者は通常は顧客の利益のために行動しはしない。取引は仮想のものであるから、露骨ないかさまも横行する。現に、この種取引を取扱う業者の違法行為は、一般の市場のレートが金1取引単位当たり1000ドルのところを700ドルで取引が成立したことにするとか、顧客が取引を終了すると告げると1か月前に取引をして損失が生じていることになっていると記載された計算書を送りつけるなどといった、常軌を逸する乱暴なものも少なくない。
現在は、貴金属から石油関連商品、さらには二酸化炭素の排出権までもがこの種の取引の対象とされており、今後も被害の発生・拡大が懸念されている。
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