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消費者金融問題



 消費者金融問題は、基本的には、破産、個人再生、任意整理の手続を、債務額、財産・収入などに照らして選択し、その手続を行うものであり、その手続の遂行も一定程度画一的なものとなる。個々の多重債務者がどの手続を選択するべきであるかは、個別事情によるが、いずれにせよ多重債務状況に陥っている以上、何らかの手続を取る必要がある。
 過払金返還請求は、いずれの手続を行うにあたっても、手続や支払いの原資に充てうるものでもあるから、総債務額の多寡によらずにその存否及び数額を調査し、回収する必要がある。借金苦で相談に行ったら借金がなくなった上にお金まで戻ってきたという結末は、7年程度以上取引を継続している多重債務者の事案においてはしばしば見られるところであるが、そうでなくとも、過払金があってこれを回収することが出来れば、支払金額の全体を圧縮したり、手続費用・弁護士費用を捻出したりすることができる。
 いわゆる「過払金返還請求」訴訟実務は、日進月歩であり、当職も大きな関心を持っている。先達の努力により、過払金返還訴訟は、「弁護士であれば誰でも出来る」訴訟類型になっている感があるが、それでもなお、弁護士の能力による解決の差異は大きいように感じられる。一口に過払金の返還請求といっても、様々な議論が日々生まれ、克服され、さらにまた新たな問題が生じている。現在当職が特に強い関心を持っているのは、以下の点である。

 過払金返還請求は、利息制限法所定の利率を超える、年29.2パーセントなどの利率で借入をし、返済していた取引について、利息制限法所定の金利で引き直し計算をして借入残金を減縮し、過払金があればその返還を求めるというものであるところ、取引履歴は、消費者がそのすべてを保持していることは到底期待しがたいから、業者から取引履歴の開示が正しくなされることが不可欠である。
 しかし、消費者金融業者の中には、取引履歴を途中からしか開示しなかったり、さらには、虚偽の取引履歴を提出するなどする悪質な業者もある。
このような場合には、一般的には、取引履歴の開示を求める文書提出命令の申立をすることが多い。業者は、古いものは廃棄したなどと主張するが、そのような主張が軽々に認められると、過払金の適正な返還請求に困難を来たすことになる。
 ▼文書提出命令
東京地決平成17年4月11日
東京高決平成17年8月19日

 また、取引履歴を開示しなかったことにより、債務整理手続や過払金返還請求手続に無用の混乱を来たすことになるから、取引履歴を適切に開示しないことは慰謝料の支払いを以て購われるべき不法行為を構成させるものと考えられる。
 また、取引履歴を開示しなかった業者に対しては、開示してきた時点の貸付残高を「ゼロ」として計算をしなおす、いわゆる「ゼロ開始」による請求が望ましい場合もある。
東京地判平成16年9月13日

 もっとも、慰謝料請求や「ゼロ開始計算」で十分な過払い金の回収ができるかといえば、必ずしもそうであるとはいえない。そうすると、記憶に基づく「推定計算」をし、これを基に請求をすることになる。しかし、「記憶に基づく」引き直し計算をすることは、極めて煩雑であり、経済的でない。また、必ずしも「推定計算」に基づく取引履歴が裁判所によって認定されるとも限らない(このことは、文書提出命令が発令された時にも同様である。)。そこで、当職は、「取引履歴を開示せよ」という旨を請求の趣旨として掲げて訴訟を提起したことがある。控訴審まで行って結局控訴審の判断は出なかったが、推定計算に基づく800万円程度の過払い金を回収するという勝訴的和解をすることができたことがある。取引履歴の開示自体を訴訟上の請求によることには、様々な法律上の争点があるが、このような手続も含め、取引履歴が適切に開示されない場合にも過払金返還請求が、より迅速に、確実になされるように工夫されることが期待される。


 民法704条後段の解釈に関連する論点として、過払金返還請求訴訟に要する弁護士費用の一部を悪意の不当利得者が賠償するべき損害であるといえるか否かが近時活発に議論されている。未だ下級審の判断例も少ないが、過払金があると知りながら「返済」を求めることが不法行為を構成させるという裁判例もあり、今後さらに議論が深化していくものと期待される。


 過払金返還請求訴訟は、1つの業者に対する請求金額が少額であることが少なくないが、貸金業者は、簡易裁判所であれば許可代理の制度により従業員を出頭させて訴訟コストを負担することなく応訴することが出来るので、過払金返還債務があることが明らかであるにもかかわらず任意に支払いをしないなどの対応を取るようになり、これを企図して、地方裁判所にした訴えについて簡易裁判所への移送の申立をすることがある。しかし、過払金返還請求社にとって、個々の業者ごとに一々簡易裁判所に訴えを提起することは煩瑣であり、現実的でなく、複数の業者に対する請求を併合して地方裁判所に訴えを提起することは法律上も許されるものと考える。
東京地決平成15年10月10日
東京地決平成17年5月26日

 同様の問題点に関係するものとして、地方裁判所に係属した訴訟について、支配人を名乗る従業員が出頭して訴訟活動を行おうとすることがある。しかし、実質的には支配人ではないのに、応訴活動をするために支配人登記をさせる業者も複数あり、そのようなときには、支配人性を争って適切な応訴を求める必要がある。


 最近は減少傾向を見せてきたいわゆる小口ヤミ金融については、被害者が一部業者に対しては一度も「返済」をしていないことがあり、そのような場合には、業者の抵抗は通常よりも悪質なものとなる例もある。しかし、そのような業者に応じて金銭の払いをすることは、自らの経済生活を破壊するに等しいものであり、その余のヤミ金融業者らからの取立ての再開にもつながる可能性が高い。このような場合にも、毅然として支払を拒み、場合によっては執拗な取立て行為を理由として慰謝料請求を求めることが望ましい場合もある。
東京地判平成15年10月8日