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金融商品取引被害事案について当職が担当した事案で判決に至ったもののうち、被害救済実務上の参考になると思われるものを紹介する。


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海外先物オプション取引
商品先物取引
外国為替証拠金取引
ロコ・ロンドン貴金属取引
未公開株商法
その他の証券取引

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海外先物オプション取引

1 オービット・キャピタル・マネジメント(東京地判平成17年2月24日)
 80歳の独居高齢者の海外通貨先物オプション取引について、適合性原則違反等を認めて損害賠償請求を認容した事例。訴訟提起前に本人が和解契約をしていた点、判決言渡予定期日の2日前に業者が入院中の被害者のもとに押しかけて訴え取下書などを書かせるといった常軌を逸した判決回避の手段に出た点に大きな特徴がある。業者の行為を詐欺行為と紙一重であると厳しく非難し、過失相殺をせず、通例に比して大きな割合の弁護士費用相当損害金の請求を認容した。
(業者ら控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集40巻113頁


2 C&Pインデックス(東京地判平成17年3月4日)
 80歳の独居高齢者の海外商品先物取引被害事案について、適合性原則違反、説明義務違反など一体的不法行為を構成させる違法事由を認め、杜撰な勧誘行為をするのは被告会社の体質ともいうべきものと窺われるとして、1割の過失相殺をして損害賠償請求を認容した。
(確定)
⇒先物取引裁判例集39巻524頁


3 エー・シー・イー・インターナショナル(東京地判平成17年10月25日)
 海外商品先物取引被害事案の中では、異例の長期間にわたって取引が行われていた事例。業者の組織的な違法勧誘を認定して、1回目の取引については過失相殺をせず、2回目の取引について3割の過失相殺をして債務不履行に基づく損害賠償請求を認容した。
(業者ら控訴、被害者附帯控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集41巻649頁


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商品先物取引

1 小林洋行(東京地判平成17年12月20日)
 昭和17年生まれの男性会社員の商品先物取引被害について、過当取引の違法性を認め、2割の過失相殺をして損害賠償請求を認容した事例。過当な取引に引きずり込まれていく被害者の精神状況について正しい理解を示している。
(確定)
⇒先物取引裁判例集42巻81頁


2 オリオン交易(東京地判平成18年3月29日)
 昭和14年生まれの主婦の商品先物取引被害について、新規委託者保護育成義務違反などを認めて過失相殺をせずに損害賠償請求を認容した事例。各違法要素の関係や一般消費者が勧誘されてする先物取引の実際について正しい理解が示されている。
(業者控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集43巻243頁


3 大起産業(東京地判平成18年6月5日)
 53歳の団体職員が団体の資金を流用するなどしてアラビカとロブスターの価格差に着目した鞘取り取引を勧誘されて高額の被害に遭った事例で、2割5分の過失相殺をして損害賠償請求を認容した事例。
(業者控訴、被害者附帯控訴)
⇒先物取引裁判例集44巻321頁
(東京高判平成18年11月15日 確定)
⇒先物取引裁判例集46巻407頁


4 オリオン交易・カネツ商事(東京地判平成19年1月22日)
 商品取引員2社との間で平行して先物取引を行っていた主婦の被害事案。取引の客観的履歴から違法性を組み立てる主張に対して、判決は丁寧に応答し、無意味な取引に関する熟した判断を示している。
(確定)
⇒先物取引裁判例集47巻273頁


5 カネツ商事(東京地判平成19年7月23日、東京高判平成20年1月24日)
外国為替証拠金取引の勧誘に端を発して行われた商品先物取引被害について1
審判決は故意に準ずる不法行為があるとして過失相殺を否定したが、控訴審は4割の過失相殺 をした。
(業者控訴)
⇒先物取引裁判例集49巻234頁
(被害者上告受理申立)
⇒先物取引裁判例集50巻491頁


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外国為替証拠金取引

1 シー・エフ・ディー(東京地判平成18年4月11日、東京高判平成18年9月21日)
 外国為替証拠金取引は賭博として公序良俗に反するものであるから、これを行わせた取締役は旧商法上の損害賠償責任を負うとされた事例。慰謝料請求も認容されている。金融・商事判例1254号35頁に掲載され、今後、被害救済実務の指針とされるものと思われる。
(被害者控訴)
⇒先物取引裁判例集43巻394頁
(業者ら上告受理申立)
⇒先物取引裁判例集45巻408頁
⇒金融・商事判例1254号35頁
⇒消費者法ニュース70号190頁


2 サンワ・トラスト(東京地判平成18年1月24日、東京地判平成18年8月30日)
 外国為替証拠金取引について、取引の終了を申し出たところ、架空の取引が後付で作出されたと認定され、損害賠償請求が全部認容された事例。外国為替証拠金取引被害には、このような異常な被害事例群がしばしば見られた。
(役員らに対するもの一部確定、一部控訴)
⇒先物取引裁判例集43巻66頁
(債権確定訴訟、確定)
⇒先物取引裁判例集45巻392頁
(東京高判平成18年10月30日 確定)
⇒先物取引裁判例集46巻320頁


3 日本エフエックス(東京地判平成18年6月8日)
 外国為替証拠金取引業者の取締役、監査役の損害賠償義務を認めて請求を全部認容した事例。
(業者ら控訴)
⇒先物取引裁判例集44巻374頁
(東京高判平成18年11月29日 業者側上告、
上告受理申立、確定)
⇒先物取引裁判例集46巻475頁
⇒消費者法ニュース70号196頁


4 ICC、インターナショナル・カーレンシー・チェンジャーズ(東京地判平成17年10月17日、東京地判平成17年4月27日)
 外国為替証拠金取引被害について、狭い説明義務違反を認定して損害賠償請求を認容した事例。被害実態等に対する正しい認識を欠くものといわざるを得ないが、それでも請求は認容されている。
(被害者控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集41巻607頁
(業者控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集44巻75頁


5 ハーベスト・フューチャーズ(東京地判平成17年7月12日)
 公設の商品取引員が行っていた外国為替証拠金取引について、取引自体を違法なものと解されるとして過失相殺をせず、損害賠償請求を全部認容した事例。
(業者控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集40巻506頁


6 リベラインベスティメント(東京地判平成17年2月1日)
 外国為替証拠金取引業者が、清算金の返還を拒んだ事例。
(確定)
⇒先物取引裁判例集40巻107頁


7 日本エフエックス(東京地判平成19年1月24日)
 外国為替証拠金取引の取引自体の違法性から、取締役、監査役、従業員の損害賠償責任を肯定した事例。
(控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集47巻323頁


8 キャピタルベネフィット(東京地判平成17年11月11日)
外国為替証拠金取引の仕組自体を公序良俗に反するという判断を詳細な理由を付して示したもの。
(確定)
⇒先物取引裁判例集41巻716頁
⇒判例時報1956号105頁


9 東京シティホールディング(東京地判平成19年1月30日)
外国為替証拠金取引業者の証拠金の分別管理に関する判決。
(控訴、和解)
⇒先物取引裁判例集47巻346頁


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ロコ・ロンドン貴金属取引

1 ファーストエージェント(東京高判平成20年3月27日、東京地判平成19年10月25日)
ロコ・ロンドン貴金属取引(貴金属スポット取引)が違法な賭博行為であり、仮に被害者において本件取引の仕組みやリスクを理解して任意に取引を行ったとしても、被害者を顧 客として取引(違法な賭博行為)に勧誘しこれに誘い入れた点において、その勧誘行為を実際に行った従業員及び取締役らは民事上の不法行為責任等を負うとした事例。原審判決は、賭博にあたらないなどとして請求を全部棄却していた。
(被害者控訴)
(被害者上告受理申立)


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未公開株商法

1 ウィンザージャパン(東京地判平成18年9月21日)
 未公開株業者の取締役の損害賠償責任を認めて損害賠償請求を全部認容した事例。過失相殺はしていない。
(確定)
⇒証券取引被害判例セレクト28巻85頁


2 サクセスジャパン(東京地判平成18年12月26日)
同上。投資事業組合の形態が採用されている被害事案に関するもの。
(確定)
⇒証券取引被害判例セレクト29巻298頁


3 さくらキャピタル(東京地判平成19年1月31日)
同上。取締役が義務を尽くしたとして争った事案に関するもの。
(確定)
⇒証券取引被害判例セレクト29巻303頁


4 アドバントレード(東京地判平成19年5月22日、東京高判平成19年11月28日)
株式発行会社の責任を肯定した点に特徴がある。
(一部確定、一部控訴)
(確定)
⇒証券取引被害判例セレクト29巻310頁


5 サクセスジャパン(東京地判平成19年5月28日)
投資事業組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者、役員の責任を認めたもの。
(確定)
⇒証券取引被害判例セレクト29巻320頁


6 コンチネンタル・ウェイ(東京地判平成19年8月24日)
事案の概要:名目的取締役であるとの主張を排斥したもの。
(一部控訴、和解)


7 日興グランダム(東京地判平成19年11月30日)
証券取引法、グリーンシート銘柄規制の趣旨などから、未公開株商法は詐欺商法であると推認されると判示したもの。
(控訴)


8 コンチネンタル・ウェイ、フロンティア、コンチネンタル・エム・ケー・マネージメント(東京地判平成19年12月13日)
証券取引法、グリーンシート銘柄規制の趣旨から、未公開株商法は公序良俗に反する違法な取引であると判示したもの。

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その他の証券取引等

1 SMBCフレンド証券(東京地判平成17年7月22日)
 国内証券会社が行う日経225先物オプション取引について、適合性原則違反を認めて5割の過失相殺をして損害賠償請求を認容した事例。
(双方控訴、和解)
⇒証券取引被害判例セレクト26巻223頁


2 川研ファクター(東京地判平成18年12月27日)
 「ニッパチ」商法と呼ばれる証券金融まがい商法の被害事案。
(確定)
⇒証券取引被害判例セレクト29巻249頁



《解説》 海外先物オプション取引
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1 オービット・キャピタル・マネジメント(東京地判平成17年2月24日)

 80歳の高齢者が、海外市場における通貨先物のポジションを原資産とするオプション取引によって老後の生活資金のほとんど全てを奪われ、楽しみにしていた友人と一緒の老人ホームに入るというささやかな夢を破壊された。被害者は自ら業者と交渉をしたが太刀打ちができるものではなく、被害金額の1割を受領するという内容で和解をしてしまっていた。勧誘・受託行為に顕著な違法があることは当然であり、被害者自らが締結した和解合意書の効力も否定されるべきであるとして訴訟を追行した。
 ところが、判決言渡し予定期日の2日前に業者の男らが入院中の被害者のもとに押しかけ、弁護士解任届、和解契約書、訴え取下同意書を被害者に書かせてこれを裁判所に提出するという暴挙に出た。本件業者は豊田商事の残党らが運営していたものであり、やっていいことといけないことの区別をきちんと付けることを期待することもできないかもしれないが、このような行為が許されて良いはずが無い。法律上、訴えの取下げなどの訴訟行為は、「刑事上罰すべき他人の行為に基づく場合」に限ってその効力が否定しうるものとされているところ、本判決は、「かかる行為は訴訟上の信義に著しく反するものというべきであり、そのような行為によってもたらされたものというべき本件訴え取下げを有効と見ることは著しく正義に反する。」とし、業者の行為を「詐欺行為と紙一重のものとさえいえる」と厳しく非難して、被害者の主張を全部採用し、弁護士費用相当損害金を含む損害の全額について損害賠償請求を認容した。私にとって、裁判所がこれほど「信頼に足りる」と感じられたことはない。非常にうれしい判決だったので、判決文を受け取った日には枕元において寝た。
 判決の要旨は、「訴えの取下げ」の効果について、「ところで、訴訟当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならないのであって(民訴法2条)、訴訟手続き上の権限を濫用することは許されない。しかして、我が国の民事訴訟制度は代理人を立てないいわゆる本人訴訟を容認しているが、原告についてみると、前記のとおり、大正11年9月4日生まれの高齢の女性であって理解能力及び判断能力が低下していることは容易に推察され、諸法及び民事訴訟制度を理解して、自ら本件訴訟手続において自己に有利な主張を展開したり各種申立を行うことは著しく困難であって、法律の専門家である弁護士を代理人として訴訟追行することが必要不可欠であり、そのことは被告らも十分認識していたといえる。しかるに、本件訴え取下げに至る経緯は前記前提事実(5)及び上記2(1)のとおりであって、永山及び盛本は、荒井弁護士に2400万円を和解金額とする和解の申し入れを拒否されていたにもかかわらず、これを無視し、同弁護士には内緒で、高齢の女性で理解能力及び判断能力が低く本件訴訟の状況や見通しを知らない原告の無思慮に乗じて(なお、Y及びOも原告と同年代である。)、判決言渡しの2日前である同月25日、原告の入院する病院まで押しかけ、訴えを取り下げてくれるなら直ちに500万円を支払うなどと甘言を弄するなどして、本件解任届を受け取って原告の利益擁護者と言える荒井弁護士から本件訴訟の代理人としての権限を剥奪するとともに、本件和解書2(上記2400万円よりも400万円低い2000万円を和解金額とし、しかも分割払いとするものである。)及び本件訴え取下げ同意書を取り付け、原告に代わって永山自らが当裁判所に本件訴え取下げ同意書を提出したものであって、かかる行為は訴訟上の信義則に著しく反するものというべきであり、そのような行為によってもたらされたものというべき本件訴え取下げを有効と見ることは著しく正義に反する。したがって、本件訴え取下げは無効というべきである。」、「オプション取引における適合性原則」について、「以上のように、オプション取引は、その仕組みが複雑で容易に理解し難く、一般人がプレミアムの変動を予測することも不可能に近く、特に、オプション転売取引は、賭け事に近い性質をもつ極めて危険性の高い取引であるから、その取引適格性は慎重に判断されるべきである。したがって、オプション取引(オプション転売取引を含む。)の取次業者の従業員は、一般人に対して同取引の勧誘をする際、当該投資家の年齢、判断能力、理解能力、取引経験、社会経験、収入、資産等を総合的に勘案して、当該投資家の取引適格性の有無を判断すべきであり、適格性が否定される場合にはこれを勧誘してはならず、適格性が肯定される場合であってもその資産や収入に照らして相当な範囲を超えた取引を勧誘してはならない注意義務を負っていると解すべきである。・・・原告は、50歳ころから株式や投資信託を買い貯める等していて、ある程度の証券取引の知識、経験があり、本件取引開始当時も3000万円相当の株式等を有していた。しかし、株式や投資信託とオプション取引(オプション転売取引を含む。)とでは、その仕組みやリスク等が根本的に異なるというべきであるから、株式等への投資経験の有無によって、オプション取引の適格性に有意な差異を設けることはできないというべきであり、原告が一般人と比較してオプション取引に関する理解能力が優れていたということはできない。」、「訴え提起前の和解書の効力」について、「被告会社の従業員らは、海外通貨先物オプション取引についておよそ適格のない原告に対し、違法に本件取引の勧誘をして、その結果3366万円余りの損害を生じさせたものであるところ、上記和解契約は、損害額の10分の1にも満たない300万円の和解金の分割払いでその紛争の一切を解決しようとするものであって、著しく不均衡であるだけでなく、80歳という高齢者である原告の理解能力及び判断能力の低さや無思慮に乗じて締結されたものといわざるを得ない。したがって、上記和解契約は、公序良俗に反して無効というべきである。」、「過失相殺」について、「(原告は損失が出ることもあることを認識していたこと、他にも友人らと得体の知れない投資話に乗るなど投資意欲が旺盛であって、大きな利益を上げようとして短期間に大金を安易につぎ込んだのであり、このことが損失を拡大させた一因になっている、としたうえ)しかしながら、これまで判示したところによれば、本件のような海外通貨先物オプション転売取引は、その仕組みが難解で、素人にとっては、そのプレミアムの変動を予測することは不可能に近く、賭け事に近い性質を持つ極めて危険性の高い取引といえるところ、原告は、長く専業主婦として生活してきた80歳の高齢者であって、上記仕組みをよく理解するだけの能力がないことなどから、本件のような取引にはおよそ不適格な者であった。にもかかわらず、被告会社の従業員らは、原告に対し、単純に円安になれば利益が上がり円高になれば損失が出るといった程度の理解しか得られないような説明をしただけで、極めて安易に、繰り返した額の取引の勧誘を行って、わずか4か月程度の間に3470万円もの大金を支出させただけでなく、オプションの転売によって利益が上がった際にもその大部分を原告に返還することなく新たな取引の勧誘をして買付資金として支出させ、もって被告会社にわずか4か月程度の間に1800万年余りもの手数料収入を得させたのであり、その行為は、原告の投資適格性を全く考慮せず、その財産の保護を無視して多額の手数料収入の獲得を狙ったもので、詐欺行為と紙一重のものとさえいえる。上記のイ点に照らすと、上記アのような事情があるとしても、本件の損害の発生、拡大につき原告にも過失があるものとして過失相殺をするのは相当でないというべきである。」というものである。
 なお、同社は、「東京プリンシパル証券」、「東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング」と名称を変更し、私募ファンドなどを取り扱っているようである。
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2 C&Pインデックス(東京地判平成17年3月4日)
 80歳の本当に人の良いおばあさんが、ふとんや浄水器などの次々販売で老後の生活資金の大半を奪われ、最後に海外市場における商品先物のポジションを原資産とするオプション取引によって老後の生活資金の全てを奪われてしまったという事案。判決は被害者の主張をほとんど全て採用して損害賠償請求を認容し、現実の被害回復は損失金額を上回ることにはなった。しかし、80年間誠実に生きてきた高齢者に対して、判決が、「人に大金を渡す時には気をつけなければならない」旨述べて1割の過失相殺をしたということには、違和感を禁じえない。80歳の高齢者に、一体今更何を「説教」しようというのか。高齢者は、ただ、人を信じればよい。
 被害者は、「ウコン」と「イラブ(ウミヘビ)」を愛飲し、私にとってはだまされて買わされたと感じられる「浄水器」を愛用する、元気で明るく気丈なおばあさんだった。事件が終了した時には、真剣な顔をしてわざわざ椅子からおり、土下座をされたので、びっくりして私も一緒に土下座のし合いをした。高齢者は、弱々しく見えるときがある反面、あるときには凛とした美しさを見せる。「子供しかるな来た道じゃ、老人泣かすな行く道じゃ」などといわれることがあるが、子供をしかるのと老人を泣かせるのは次元が違う。
 人を信じることは「悪」であるはずがなく、現に、「私は頼まれれば何にだってはんこ押しますよ」と法廷で言い切った被害者の顔には、いやしさのかけらも無かった。人間生活の営みをいびつにする悪質業者の存在ゆえに、人を信じるという「自然」な行為をあたかも「悪いこと」であるといわなければならなかったり、高齢者に「人を信じるな」といわなければならないとすれば、それは悲しいことである。我々法曹が、本件がごとき詐欺被害を目の前にしたとき、なすべきことは「悪者」に対する圧倒的非難であり、ほんの少しでも高齢者の尊厳を奪うかのような「人を信じたことへの非難」をするべきではないと思う。本判決は、「このような杜撰な勧誘行為をするのは、被告会社の体質ともいうべきものと窺われる。」と業者を厳しく非難し、請求のほとんどを認容したが、1割の過失相殺をしたことに、私は今なお強い違和感を禁じえない。なお、本件では、判決確定後も任意の支払を得ることができず、動産執行等の手続を採ってようやく回収を見た。
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3 エー・シー・イー・インターナショナル(東京地判平成17年10月25日)
 海外市場における商品及び通貨の先物取引のポジションを原資産とするオプション取引において、業者が、「この相場は火曜日になったら暴騰する。寝ている場合ではない。保険金を解約してお金を作れるだろう。」等という異常な勧誘を行っていたことが、被害者が録音していたテープなどから明らかになった事例。判決は、「本件取引の期間、被告においては、営業員に金融商品についての十分な教育をせずに、顧客獲得のノルマのみが課され、これを達成できないときには制裁が加えられたほか、給与面でも歩合給に依存する部分が大きかったことから、勢い、オプション取引のリスクを十分説明せずに利益を強調した無理な顧客獲得がなされる素地があった上に、現に、組織的に利益強調型の勧誘行為が行なわれていたことが窺われる。」と判示し、初回取引について過失相殺をせず、第2次取引においても過失相殺を3割したものの損害賠償請求を認容した。7年間という長期間にわたる被害は珍しく、不法行為に基づく損害賠償請求については消滅時効も問題となったため、債務不履行に基づく損害賠償請求という法的構成を採用した。業者の体質自体を非難する判決は、同種被害事案の解決をより適切かつ迅速に行なわせることになり、高い価値があると考える。
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《解説》 商品先物取引
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1 小林洋行(東京地判平成17年12月20日)
 昭和17年生まれの男性会社員、取引期間平成15年8月から平成16年1月まで、特定売買比率65パーセント、手数料化比率は101パーセント。脳内出血や前立腺がんの既往があり、手術後で意識が高揚するなどしていた時期であったが、取引期間中も海外に出張するなどはしていた。損害2500万円。本判決は、特定売買について、チェックシステム廃止されたとしてもこれらの趣旨は何ら変わりはない、手数料化比率は取引の違法性を評価する有効な指標となる、とし、「原告は、被告従業員の勧誘に応じて本件取引に応じたことについて過失を問われるべきではあるが、その後、取引を継続し、拡大したことについて原告の過失を問うのは相当ではない。けだし、本件取引の実態が、前期認定判断のとおりであること、また、被告が主張するように原告の取引の継続が損失を取り戻すためであったとしても原告のような一般消費者が、短日時の間に数百万円相当額の損失を被り、これを挽回するためには、同額程度の追加出損が必要である旨商品取引員の従業員から告げられれば、驚愕し、そのため冷静な判断力を保持することが著しく困難になることは、容易に理解しうるからである。」として2割の過失相殺をした。
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2 オリオン交易(東京地判平成18年3月29日)
 取引損1276万円、15年10月から16年8月、昭和14年生まれの主婦、株式経験等のほか、900万円程度の外国為替証拠金取引被害の経験がある。判決は、外務員に不可避的に依存して行われるものである商品先物取引の実際を正しく把握したうえで、「受託者である商品取引員としては、一般に、新規委託者の習熟期間中においては、限度を超えた取引をすることのないように助言すべきであることはもとより、短期間に相当性の範囲を超えた頻繁な取引を勧誘するべきではないし、損失の回復の名のもとに一層過大な取引を重ねるような取引を勧誘してはならないという義務が課せられているものというべきである」、「適格性を完全には否定できないものの、(属性)からして新規委託者保護育成義務は加重されてしかるべきであり、取引数量は属性に比して過大である。原告がそうした損失を被ったことで正常な心理状態を保てなくなったことは想像するに難くなく、その損失を取り戻すために投資金額を次第に増やして行き、被告に勧められるままに両建など一般には必ずしも合理性のない取引を行わされ、これらにより一層損失を拡大させた」旨判示し、被害者の請求のほとんど全て(弁護士費用10万円単位未満切捨て)を認容した。
 被害者はか弱い女性であり、夫を亡くして自身の存在にも強い意味を見出すことができず、毎日をむなしいと感じていた。そのようなところに勢いだけはある若い男性らが入れ替わり立ち代り押しかけてきて金の交付を執拗に求めるのである。このような態様で正常な投機取引など行われるはずがない。現に、取引は、無意味な取引を含む著しく過当なものであった。
 被害者は法廷でうそをつくなど信じられないというような誠実そのものの人であり、被害者本人尋問は必ずしも成功したとは言えず、相手方代理人の質問に対し、消え入るような声で「分かりません」というばかりである一方、業者の外務員は、つらつらと交付書面を朗読していくような証言をするのであるが、証言が終わってみると、その証言に要した時間自体が、現実の説明時間を越えてしまっている(つまり、法廷で再現した説明が実際にはなされなかったことがその証言時間自体から明らかになる)という滑稽なものであった。本判決は、過失相殺をしなかったものであるところ、過失相殺については正面から判断が下されてはいないが、このような外務員の証言態度、業者の訴訟追行姿勢から、誰が真実を述べ、誰がそうでなかったかを裁判所が明確に認識し、業者に対してあるべき正当の拒絶感とでもいうべき強い非難を向けた結果であろうと考えている。
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3 大起産業(東京地判平成18年6月5日)
 53歳男性、財団職員、公金出納取扱者に準じる立場、投機経験なし。取引期間15年1月から16年3月(14か月)、損金4900万円、うち手数料が8割。特定売買比率56パーセント。鞘取りの勧誘から入ったものの、2回目の取引から既に鞘取りは解消。財団の資金を流用し、消費者金融からの借入れをするなどして取引を著しく拡大させられた。判決は、「本件取引開始時の勧誘行為はともかく、本件取引の状況・・・を見れば、飯川は原告の資産、知識、経験等に照らし、明らかに不相当な、原告に適合しない過当取引を勧誘し行わせたことが明らかであるから、この点については適合性原則違反があったというべきである」、「アラビカとロブスターの価格差が開く方向に向かうだろうから鞘取り取引をすれば2、3割くらいの利益が出る、すぐに始めたほういいなどと説明し、原告はこれを信じて取引を開始したので断定的判断を提供したものであり違法である」、「委託者がそのことをよく理解したうえである特定売買を選択することがその時点の相場状況において有効な取引手法であると主体的に判断して行うのであればともかく、そうでない限りは、問題がある取引方法というべきであり、商品取引員は、委託者に特定売買を勧誘する際には、委託者が右のような判断を適切に行なえるように、必要な説明をする義務を負うというべきである。」、「原告が損失を取り戻したい一心で飯川の勧めに従い、その取引をすべて飯川に委ねているのに乗じて飯川が過当な取引を勧誘した結果とみるべきであって、このような売買は実質的な一任売買というほかなく、委託者の利益を損なうものとして違法である。」などと違法性を比較的詳細に認定し、「53歳の壮年、財団の総務課長という地位経歴、一応の説明を受けて一定のリスクがあることをある程度認識したうえで取引を行っていること、管理担当者から資産に関する質問をされたときにまだ余裕があるなどと事実に反する回答を行なったことなどから損失の発生拡大に過失がある」として、過失相殺を2割5分したうえで損害賠償請求を認容した。本件被害は、勤務先の金銭を不当に流用して先物取引の原資にしてしまったと言うところに特徴があったが、同様の事件は全国でも少なくない。本件事件の業者は、本件取引の最中に、不適格資金を流入させたとして日本商品先物取引協会から制裁処分を受けており、組織的に違法流用資金を委託証拠金の原資とさせる勧誘行為を行っていた疑いが強いと思われる。
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4 オリオン交易・カネツ商事(東京地判平成19年1月22日)
 2社の商品取引員と平行して取引を行っていた事例。被害者は詳細なメモを記載するなどしており、そのような書面の表面をなぞるのみでは、「理解して主体的に取引をしていた」と誤解されかねない事案であったが、頻繁過量な取引がなされ、その内容は経済的合理性を決定的に欠くものも多かったので、取引の客観面からの主張を強くした。判決は、常時両建、同時両建やこれに類する両建、その同時仕切り、損切り直しなどの不合理性を詳細に判示している。
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5 カネツ商事(東京地判平成19年7月23日、東京高判平成20年1月24日)
 昭和16年生まれの女性。株式の現物取引の経験はあるものの、パートで収入少なく、資産も多くはない。外国為替の勧誘をされて金を委託したところ、直後に白金の先物を勧誘された。取引は平成16年7月1日から同年10月22日、実損1600万円のところ、手数料が3000万円にも上っていた。判決は、主に説明義務違反のところで違法評価をしており、説明義務に関する規範立ても正しくされていると評価できる。
 さしたる収入がなく、家計から貯めた預貯金はあるものの、すでに年金生活に入っていた夫との老後の生活資金にすぎず、余剰金はなかった上、理解力、判断力が甚だ欠如しており、商品先物取引の経験はなかったから適格性が欠けていたというべきである。
 そういう者でも、理解したうえで自ら進んで積極的にしようとしたのであれば必ずしも適合性原則違反といえない場合もありえないではないが、原告は自ら積極的に連絡したのではなく外国為替証拠金取引を行うについての挨拶の場で先物の勧誘を受けたに過ぎないから適格性を有していたとはいえない。
・夫に内緒という場合には、家計内の貯蓄から勝手に支出することが疑われるから、外務員が納得できる説明を得ずに手続を進めることには大いに問題がある。
・ガイドの内容、別冊の内容の多数の事柄についての記載は、「商品先物取引を開始する以上、知っていなければならない基本的な知識である。このような多量の情報を正確に初心者に理解させるためには1時間半などという短時間の説明で足りると解する余地がないことは明らかである。
 手数料を含めた計算関係についても、顧客自ら計算することができるようになってから取引を開始しなければならないのは当然である。単一商品を長期保有する計画であればともかく、相場は刻一刻と変動する可能性があるから、予想しうる様々な類型ごとにこのような場合はこうなる、このような場合はこうなるということを顧客が自分で判断して計算できるようにしてから委託契約を締結しなければならない。
 顧客の理解度を顧客に計算させてみるなどの方法により確認しつつ説明されなければならず、単に一例を示して理解できたかと聞いて理解できたとの返答を得れば理解されたとしてよいなどということはできない。
 自動車触媒として白金が使われていること、中国をはじめとする新興国のモータリゼーション化を言う勧誘は、短期的取引を本質とする先物に関してほとんど全く意味を持たず、むしろ、あえて原告を錯覚に陥れて誤導するセールストークである。
 取引当初の書面作成の態様、審査の形骸化の指摘。
 取引の開始の12日後に基本的な事柄が記載された売買報告書は説明がなかったことあるいは原告が理解していなかったことを示すとともに、このような書き込みのある書面が被告に存在していたことからすれば形式的な証拠作りを疑わせるに十分である。
 「被告は過失相殺を主張するが、本件は、被告従業員の勧誘により外国為替証拠金取引に入ることとなった原告に対し、勧誘前に内部資料を作成し、原告を商品先物取引に引き込むことを予定して、原告に会い、白金の値上がりを予想してみせて原告を勧誘し、理解力の甚だ欠如した原告が商品先物取引とはどのようなものかを正確に理解していないのに、安易に値上がり益が得られると誤信させ、老後の生活資金であった預貯金を拠出させて、その殆どを費消させた事案であり、本件勧誘と取引継続は、故意に準ずる不法行為であるといわなければならない。これに対し、原告にも、迂闊さ、安易さが認められるものの、本件勧誘と取引継続の違法性の上記性質からすると、原告のうかつさを、安易さをもって、被害者側の過失として損害の算定上考慮することはできないと解するのが相当である。」
これに対して控訴審判決は被害者が自己の意思で取引を行ったなどとして過失相殺をしているが、説得的な根拠が示されているわけでもない。下級審裁判例と全く反する判断がなされるなどしており、東京高裁の判決としては極めて拙いものと考える。
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《解説》 外国為替証拠金取引
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1 シー・エフ・ディー(東京地判平成18年4月11日、東京高判平成18年9月21日)
 80代独居寡婦。アイコムによる被害をきっかけに10社を超える業者から狙われ、総額1億円にもなる被害にあった中の1つ(ほかにも訴訟が係属中であり、被告数は40を超えた。)。CFDについては弁護士会の法律相談で被害者本人が弁護士を依頼して訴訟を提起していたが、CFDが破産したためか、被害が親族に発覚してもめたのか、訴訟の中盤で代理人が一方的に(被害者の親族らによれば)辞任した。訴訟を引き継いでから、代理人も交代したことであるし、早期に裁判所との間でも争点に対する認識を共通にしたいと思って弁論準備手続期日の指定を上申したが、必要ないとのことであったため、乱暴であるとは思いつつも、のんびりやられても困ると思い、私が引き継いだ後の最初の期日である1月の期日に、すでに提出されていた証拠のうち主に相手方提出のものに依拠して証拠弁論をしたうえ、人証調べは要らないから同日結審して欲しいと強く求め、早期の判決に至った。
 本判決は、担当従業員の責任を認め、その余の従業員(ほとんど関与していないので、取下げたが相手方が同意しなかった)、取締役の責任は否定。外国為替証拠金取引の公序良俗違反性について否定。代表取締役の責任は判示中肯定するものの破産による中断のため主文には顕れず、平取締役については代表取締役の任務懈怠を知り、あるいは知りえたのに放置したとの事情は認められないとして責任を否定。担当従業員については、損害(1240万円)全額、慰謝料、弁護士費用を認容。人証調べをしていないのに、「原告は、適合性を欠くのに十分な説明を受けないままに、危険性が高い本件取引を勧誘・継続させられたものであること、原告は、老後の生活資金を失っていること、既に、シー・エフ・ディは破産手続き開始決定を受け、同手続の中で原告の受けた損失が回復される見込みが少ないといえることなどを考慮すると、本件においては、原告の精神的苦痛を慰謝すべきであるといえ、その精神的苦痛を慰謝するには、100万円が相当である。」として慰謝料請求を認容している。
 自分で言うのもはばかられるが、訴訟活動は「乱暴」であった。しかし、そうでもしなければ訴訟は迅速に終了せず、被害救済は日々困難を増す(相手方の準備書面も意味がないと思われる求釈明をしてみたりで、取引の客観的履歴すら明らかにされていなかった。)。結果は、良かったような悪かったようなであるが、仕方がなかったと思う。
 上記判決に対しては被害者側が控訴し、取締役の責任について逆転勝訴した。東京高判平成18年9月21日。本件外国為替証拠金取引の公序良俗違反性を詳細な理由を付して肯定したうえ、取締役に対してした慰謝料請求を含む損害賠償請求を全部認容した。同判決は、東京高等裁判所が「外国為替証拠金取引」の公序良俗違反性について判断を示した初めてのケースであると思われ、その内容も、いわゆる「外国為替証拠金取引被害問題」の最終決着にふさわしい判決であり、多くの同種訴訟に少なからぬ影響を及ぼすものと考えられる。
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2 サンワ・トラスト(東京地判平成18年1月24日、東京地判平成18年8月30日)
 平成16年8月5日に業者に電話をかけて取引をやめると告げて了解した旨の返事を得たにもかかわらず、翌日電話をしてみると、「あなたのお金はもうありません。」。驚く被害者に対して、「2か月前に取引をしたじゃないですか、それで2700万円損が出ていますから。」という従業員(業者取締役)の言葉があり、数日後、2か月前に取引をしたという報告書が郵送されてくる。今更なんでこんなものが、とあわてても、後の祭り。「こんなの知らない」、「でも損が出てますから」というやり取りで埒があかないうえ、精算金として残っているという500万円も何だかんだと言って返金しようとしない。結局、800万円を受領して一切の精算をするという和解書を作らされてしまったという事案。誰がどう考えても違法であることは明らかである。しかし、裁判所が、このようなあからさまな違法を正面からきちんと認定してそれが違法であるという当然のことを言い切ってくれたのはうれしい。外国為替証拠金取引業者というものはここまでのことさえも厭わない存在であったのだ、ということが裁判例にきちんと残されなければならない。そして、このような悪質な被害は、「私的差金決済取引も法律で禁止されていなければ構わない」という誤った認識が広まったこと、同旨の判断を示す裁判例すらあったことに起因することに、今更ながらに想到される必要がある。
 なお、破産会社に対する債権確定請求訴訟の判決は、本判決同旨を言う上、「さらに観点を変えれば、岡田及び藤田によって、夫が交通事故の保険金として受け取った5000万円程度の預金のうちのかなりの額を本件取引につぎ込まされ、被告藤田において、架空である本件問題取引を作出した上で、岡田及び藤田において、和解に合意しなければ精算金の支払いを拒否するという方法で、強いて原告に本件合意をさせ、それによって、サンワ・トラストのいう和解金という名称で返還を受けた金額が本件問題取引によって作出された損失額に比較してかなり小額であることなどの諸事情を考慮すれば、本件合意をもって、原告のサンワ・トラストに対する不法行為に基づく損害賠償請求権が消滅したと主張することは、権利の濫用に該当するというべきである。」と判示している(東京地判平成18年8月30日)。和解合意の効力について、「権利の濫用」を理由に否定した裁判例はほとんど見られず、今後の被害救済実務に参考になるものと考えられる。
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3 日本エフエックス(東京地判平成18年6月8日)
 昭和5年生まれの女性、投機経験無し、平成17年3月から6月まで、損害670万円。詐欺的勧誘を組織的に行なっていた会社の役員従業員らに対する判決。同社の役員は平成14年に倒産した悪質な商品先物取引業者「アイコム株式会社」の幹部構成員であった者が多く、違法を承知で行なう確信的な詐欺的商法であったと思われる。彼らの取締役としての責任を追及していかなければ、外国為替証拠金取引問題は、彼らにとって「荒稼ぎの波」の一つであったと言うことになってしまう。破産記録等から役員らの責任を基礎付けていき、本判決は、全ての役員について、「電話帳による不招請の勧誘を日常的に行っている、原告の年齢、職業、収入、資産、投資経験など、適合性を基礎付ける事実関係を知りまたは知ることができたのにこれらの点を検討することなく取引を勧誘して多額の証拠金を拠出させている」、「利益相反を説明せず、高い金利を強調し、リスクを説明せずに断定的判断を提供した」、「破産会社においては、破産会社が行う外国為替証拠金取引の仕組みや危険性について、これを営業社員らに理解させるための十分な研修等は行われていなかったものであり、本件においても、取引の仕組みや危険性を顧客に正確に理解してもらうための分かりやすい説明をし得るだけの知識と能力を有していない被告林及び被告菅原が営業行為を行うことによって不法行為が発生している。また、破産会社においては、適合性原則や説明義務など、営業社員らがその営業活動を行うにあたって遵守すべき事項につき、違反が生じないようにするための体制は特に採られておらず、かえって、歩合給制が採用されており、営業に携わる従業員が顧客獲得に熱心になりやすい環境があった。さらに、顧客からの預かり資産と自社資産との分別保管が行われておらず、顧客からの預かり資産が適切に管理されていなかった。その結果、平成17年当時、破産会社には、多くの苦情が寄せられ、また、多数の紛議が生じており、同年11月22日及び同年12月21日には、監督官庁から業務停止命令等の行政処分が下されるなど、外国為替証拠金取引を取り扱う業者として、不適格であることが明らかな状況に陥っていた。そして、平成18年1月25日には破産会社につき破産手続きが開始され、不法行為に基づく損害賠償債権を含む破産債権が回収不能の状態となっている。この様な事実に鑑みると、破産会社においては、営業担当者らによる不法行為を生みやすい土壌があったにもかかわらず、これを防止するための適切な対策が採られていなかったものであり、これが原因で上記不法行為を含む多数の紛議が生じてしまったものと認めることができ、この点につき、破産会社の役員らは、責任を負わなければならないというべきである。すなわち、被告人見は、破産会社の代表取締役として、その従業員が違法な営業行為等を行わないようその業務を適切に監督し、違法行為を未然に防止するための体制を構築する義務を負っていたというべきであり、また、被告(取締役ら)・・・は、同社の取締役として、被告人見のかかる業務執行を監督すべき義務を負うところ、上記認定のとおりの破産会社の状況に照らすと、同被告らは、代表取締役又は取締役として果たすべきこのような義務を怠っており、かかる任務懈怠につき重大な過失があったものと認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。そして、同被告らが、上記義務を履行していれば、本件における不法行為の発生も避けることができた可能性が大きいと推認されるから、同被告らは、旧商法266条の3第1項に基づき、原告に対して損害賠償責任を負わなければならない」、「被告神谷は、破産会社の唯一の監査役として、会計帳簿等を調査するなどして不適切な会計処理の是正を図るとともに、取締役の職務執行を監査する義務を負うところ、破産会社においては、上記・・のとおり、顧客からの預かり資産と自社の資産との分別管理がされておらず、顧客からの預かり資産が適切に管理されていなかったにもかかわらず、被告神谷は、これを放置し、適切な会計監査及び業務監査を怠った。顧客からの預かり資産を自社資産と区別し、その保全を図ることは、外国為替証拠金取引の適正性を確保するための基本的な遵守事項であるといえるから、被告神谷が監査役としての職務を全うせず、破産会社における杜撰な資産管理を放置したことには、重大な過失があると認められる。そして、被告神谷が監査役として負担する上記義務を履行していれば、本件における不法行為の発生も避けることができた可能性が大きいと推認されるから。同被告は、旧商法280条1項、同法266条の3第1項に基づき、原告に対して損害賠償責任を負わなければならない」、「以上に対し、被告取締役・監査役・・・らは、名義上、破産会社の役員となったものにすぎないものである旨主張するが、このような事実をうかがわせる証拠はなく、同被告らの責任を減免するべき事情は見出すことはできない。」として損害賠償請求の全部を認容した。この種の「外国為替証拠金取引」業者の役員らに対する損害賠償請求訴訟は全国の裁判所に多数係属しているものと思われ、本判決は、上記東京高判平成18年9月21日とあわせて、実務上非常に参考になるものと考えられる。 
 また、1回の電話をしたに過ぎない新入の末端構成員に対しても、「もとより、上司らの指示であるとはいえ、被告菅原が行った電話帳による不招請の電話勧誘が不適切な勧誘方法であることは明らかなのであって、同被告が適合性原則違反及び説明義務違反に基づき、不法行為責任を負うべきことは当然であるが、なお、以上において説示した事情のもとにおいては、本件取引によって原告に生じた損害の全部について被告菅原に責任を負わせることは相当とは言い難く、損害の公平な分担見地から、原告に生じた後記損害の1割の限度で被告菅原に賠償義務を課すことが相当と認められる。」として損害賠償請求の一部が認められたことは、今後の被害回復にとっての大きな足がかりになりうる。
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4 ICC、インターナショナル・カーレンシー・チェンジャーズ(東京地判平成17年10月17日、東京地判平成17年4月27日)
 被害者は高齢の姉弟で、姉は大正14年生まれの女性、他のデリックス、エー・シー・イー(と思われる)との間で取引経験あり。地主であって資産は豊富。取引期間平成15年4月から同年10月。損害約2000万円。弟は昭和4年生まれ、先物会社フジチュー(その後MMGアローズ株式会社に商号変更し、破綻。)で6000万円を奪われた経験がある(これについても訴訟を提起し尋問後に実損害に700万円の弁護士費用相当損害金を付して支払う旨の訴訟上の和解が成立)。姉が契約書を作成し、業者とのやり取りもほとんどを行っていた。平成15年末に受任、仮差押、証拠保全をして、平成16年1月に訴え提起。
 判決は、弟を取引当事者と認めず、同人の請求を棄却。姉については、投機的投資的取引の経験などから1割の過失相殺をしつつ認容。これについては債権確定訴訟に請求の趣旨を変更して控訴をし、控訴審で、破産管財人との間で、姉、弟ともに実損害金額の全額を破産債権と認めるとの和解が成立した。
 上記事件の弁論終結後判決言渡し期日の前にICCが破綻したため、改めて役員の不動産を仮差押して、役員、従業員らに対して訴訟を提起。結局、判決は、色々な業者から何度も何度もだまされた高齢者について3割の過失相殺をして請求を認容した。本件では判決にはいいところはあまりない。
 本件は、気丈で明るい姉と、朴訥で優しい弟が、助け合って暮らしている「老人の家」に詐欺業者が群れを成して押し寄せて、受領証も交付することなく家の前の畑で泥にまみれたスーパーのビニール袋の中に入った1000万円の塊を手渡させるなどした事案であった。その状況を思い浮かべ、そのような所業ができた者の精神状況を思うとき、心から薄ら寒いものを感じ、そして、それは、強い怒りになった。彼らを救えなければ、弁護士としての価値はないとまで感じた。業者への証拠保全から預金仮差押、役員の不動産仮差押、訴訟2つ(会社と自然人)×2(1審と2審)と、心血を注いだ。1審の2判決はいずれも期待を裏切るものだったが、結果としては相当額の被害回復を得ることができそうである。弟さんは体が悪く、被害回復を見ることなく他界された。
 本件に関する2つの判決はいずれも過失相殺をしている。しかし、これは、絶対に誤っている。老いは過失か。病は過失か。人に等しく訪れる老いを、これに乗じて金銭を騙し取った者に対してする損害賠償請求権を減じさせる理由とすることに、いかなる正義、公平があるというのか。このような判決を書く裁判所があることが、私には本当に情けなく思えて仕方がない。
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5 ハーベスト・フューチャーズ(東京地判平成17年7月12日)
 昭和7年生まれの寡婦。年金生活。30年程度の証券取引経験があり、信用取引の「経験」もあった。取引の端緒も、自らしたはがきによる資料請求。資産は3000万円程度。実損約1800万円。取引期間平成15年6月5日から同年10月16日。
 平成16年3月18日訴え提起、平成17年1月に人証調べを経るも、和解ではハーベスト側は手数料相当金額である450万円以上を一貫して拒否。3月に弁論終結して1回判決期日が延期され、7月に判決言い渡し。弁護士費用相当損害金を含む全額認容。まさに「一体的不法行為構成」という感じのざっくりとした判断であるが、取引の適法性について、「上記1のとおり、そもそも違法なものであると解される本件取引を広告・勧誘し、取引の仕組みをすら理解することが容易ならざる原告をして取引に至らしめた被告には、原告に比してより一層責められるべき点があるといえ、損害の公平な分担という観点からは、過失相殺を行なって、原告に損害の一部を負担させることは相当ではないと考えられる。」として、過失相殺をすることなく請求の全てを認容した。
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6 リベラインベスティメント(東京地判平成17年2月1日)
 取引の終了を求め、清算金残が生じたところ、「精算金」についてすら任意に返還してこなかった事例。請求が認容されるのは当たり前のことであるが、業者は、精算金は1780万円となったことは認めるが、これを返還する義務はないとか、損害賠償について話し合いが成立しなければ精算金も支払わないとか、取引が終了されたことにより業者に得べかりし手数料利益の損害が生じる(取引を続けてくれればもっと手数料が入ったのだからその分を賠償せよ)などという、およそ主張として成り立ちうる余地のない主張をするまでして精算金の返還を拒んだ。外国為替証拠金取引問題の訴訟では、業者側代理人の、このような異常な訴訟活動がしばしば見られた。
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7 日本エフエックス(東京地判平成19年1月24日)
 東京高判平成18年9月21日が公刊された後には、独立系外国為替証拠金取引の仕組自体を公序良俗に反する違法なものであるとする判決が主流となっている。本判決は、外国為替証拠金取引がそれ自体公序良俗に違反する違法な行為であるからこれを勧誘する従業員の行為は不法行為を構成するとし、このような違法な取引を、分別管理もせずに行わせたとして、取締役及び監査役に対する損害賠償請求を認容した。被害者は、他の外国為替証拠金取引業者の被害にも遭っていたが、判決は違法性が極めて強いとして過失相殺を明示的に否定した。
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8 キャピタルベネフィット(東京地判平成17年11月11日)
 外国為替証拠金取引の仕組自体を公序良俗に反するという判断を詳細な理由を付して示したもの。このような判断が早期に積み重ねられていれば、外国為替証拠金取引被害の急増は、あるいは防げたかも知れない。
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9 東京シティホールディング(東京地判平成19年1月30日)
 「個人投資家である顧客を対象として、外国為替証拠金取引が行われる場合、証拠金の重要性、顧客の合理的期待に鑑みれば、顧客の証拠金ないし委託金は、取引会社のそれと適正に区別されなければならず、取引会社がこれをほしいままに自己の用に供し、その結果顧客に返還することができなくなった場合には、不法行為法上の違法性が否定できない」と判示し、証拠金の流用を受けた者の不法行為責任、流用した会社の取締役、監査役の旧商法上の責任を肯定したもの。近時、証拠金管理の不適正さから破綻する業者が相次いでおり、今後、証拠金管理を適切にしなかったことに関する役員らの責任を追及する争訟が増加すると考えられ、その種の争訟の参考になると考えられる。なお、本件は、控訴審で弁護士費用を含む全額の支払を受ける訴訟上の和解が成立している。
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《解説》 ロコ・ロンドン貴金属取引
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1 ファーストエージェント(東京高判平成20年3月27日、東京地判平成19年10月25日)
 ロコ・ロンドン貴金属取引をその仕組自体から違法であるとする判断を明示したもの。「本件取引においては、売主である被控訴人会社(注:業者)が金の現物を買主である 顧客に交付することは当初から予定されておらず、顧客が一定の期間内に反対売買をすることを前提として、これによってその差額を算出し、これを金銭で授受して当該取引を終了させるものであると認められる。しかるところ、売買差金の額は、顧客が買った(売った)とされる金の「ロンドン渡しの金の現物価格」に「ドル円の為替レート」を乗じた額との差額によって算出されるものであり、そして、「ロンドン渡しの金の現物価格」も「ドル円の為替レート」も、基本的には、被控訴人会社及び顧客において確実に予測できないものでありまたその意思によって自由に支配することもできないものであるから、そうとすれば、本件取引は被控訴人会社と顧客との間において偶然の事情によって利益の得喪を争うものといわざるを得ず、本件取引は賭博行為に該当するというほかはない。そして、本件全証拠によっても、本件取引(賭博行為)の違法性を阻却する事由を認めることはできない。したがって、仮に控訴人において本件取引の仕組みやリスクを理解して任意に本件取引を行ったとしても、控訴人を顧客として本件取引(違法な賭博行為)に勧誘しこれに誘い入れた点において、その勧誘行為を実際に行った被控訴人Aはもとより、その勧誘について被控訴人Aと意思の連絡があったものと推認される被控訴人Bら(取締役ら3名)も、民事上の不法行為責任を負うものというべきであり、そして、被控訴人会社も民法715条1項又は会社法350条により控訴人に対して損害賠償責任を負うべきものである。」、本件損害賠償請求にも民法708条が適用ないし類推適用されるが、「(請求金額のうち損金は)賭博に負けたことによって被控訴人に交付された金銭及び(手数料は)賭博を行うためのいわゆる寺銭であるというべきであるから、そうとすれば、これらは公序良俗に反する行為を目的としてあるいは公序良俗に反する行為を行った結果として交付されたものということができ、民法708条本文にいう「不法な原因」のために給付されたものと言うことができる。」しかし、「(被害者の属性、被控訴人会社から勧誘されたものであること、被控訴人が手数料を得るものであること、その額は証拠金の1割に相当すること、などを考慮すると)本件取引(賭博行為)についてはその不法な原因は受益者である被控訴人会社により多く存したもの、換言すれば、不法性は被控訴人会社の方が控訴人に比べてより強いもの、というべきである。」から、その返還請求の趣旨である損害賠償請求は許される。」過失相殺をしている点は残念である。高齢者から金を奪う詐欺商法について過失相殺を云々するなど、あるべき正当な高齢者保護の要請と相容れない。
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《解説》 未公開株商法
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1 ウィンザージャパン(東京地判平成18年9月21日)
 未公開株商法業者の取締役責任に関するもの。会社及び代表者、取締役1名については、既に先行して欠席判決。本判決は争ってきた取締役についてのもの。請求全部認容。1億2310万円の支払いを命じるにしては、裁判所の判断は、実にあっさりしたもの。別紙を除いてわずか4ページ。未公開株商法などのあからさまな詐欺商法は、迅速に訴訟を提起し、早期に債務名義を得たことが有意であり、裁判所も、4ページも書けば十分だと思う。裁判所の判断は下記のとおり。「これで、いいのだ。」
 「証拠及び弁論の全趣旨によれば、訴外会社の原告に対する未公開株式取引の勧誘から売込みにかけての取引は、公開を予定していない会社の株式や株式譲渡制限がある会社の株式を株式公開によって値上がりが見込めると称して売込みをしていたり、客観的な価値評価が困難な未公開株式を、その情報を入手する能力のない原告に対し、その価値を著しく上回る価格で譲渡しているのであるから、いずれも詐欺的な取引であり、訴外会社による原告との株式取引は、不法行為に該当するものということができる。そして、弁論の全趣旨によれば、・・・の間、被告は訴外会社の取締役であった。上記のとおり、代表取締役の悪意により第三者に損害を行わせる職務行為を行い、それについて、被告が取締役として、取締役会を招集する等の手段によって、そのような違法な職務行為を監視監督をしていない(そのこと自体は、被告の自認するところである。)のであるから、被告については、第三者に対して、旧商法266条の3を根拠とした損害賠償義務を負うという結論になる。なお、被告は、取締役会等を通じた取締役としての実権はなかったとか、給与を受給していたのみであると主張するが、上記の取締役の責任は、旧商法が、取締役に特別に負わせた責任であるから、取締役である以上、その責任を免れることはできず、この被告の主張は、上記判断を左右するものではない。」
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2 サクセスジャパン(東京地判平成18年12月26日)
 投資事業組合名目でする未公開株商法について、業者及びその取締役らの損害賠償責任が肯定されたもの。業者は口頭弁論終結後に代理人弁護士により弁論再開の申出をしたが、裁判所はこれに応じず、迅速に判決した。この種の被害事案は時間が大切であることを理解してされた判決であると思う。
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3 さくらキャピタル(東京地判平成19年1月31日)
 未公開株商法の違法性を簡潔ながら正しく指摘し、取締役会を招集するなどして業務執行行為の適正を図ることをしなかった取締役について損害賠償責任を認めた。業者及びその余の取締役らとは訴訟上の和解が成立し、月々の分割払いを受けていたが、1人の取締役だけ、自分は違法でない取引をするように言っていたなどとして和解を拒否して判決に至ったもの。
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4 アドバントレード(東京地判平成19年5月22日)
 未公開株商法業者の役員、従業員らに対する損害賠償請求に加えて、売買の対象となった未公開株式の発行会社及びその代表者に対しても損害賠償責任を認めたもの。未公開株商法を行う業者は既に実態を失っているものが多く、現実の被害回復のためには、未公開株商法を共謀して行っていた発行会社に対しても責任を追及する必要がある。
 本件では、取締役の一人が控訴したが、「名目的取締役である」などとの主張は高裁でも排斥されている。
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5 サクセスジャパン(東京地判平成19年5月28日)
 投資事業組合の形態を用いて、証券取引法の形式的違反を免れようとする例が多く見られたが、取引の実態を見ると未公開株商法であることが明らかなものは多い。業者が採用しているとする法律的構造に惑わされないようにすることが必要である。
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6 コンチネンタル・ウェイ(東京地判平成19年8月24日)
 取締役の一人が不動産を有しており、これに対する強制執行をすることにより、弁護士費用相当損害金の被害回復もなしえた。現実の被害回復は、「運」にも大きく左右される。
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7 日興グランダム(東京地判平成19年11月30日)
 「ところで、登録を受けないで証券業を営むことが3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科という罰則(証券取引法198条11号)をもって禁じられていること、証券業の登録を受けた会社であっても、証券業協会の規則(甲21の「店頭有価証券に関する規則」及び甲22の「グリーンシート銘柄に関する規則」。なお、証券会社は、証券業協会への加入を法的には強制されないが、加入しない証券会社は、証券取引法61条各項により内閣総理大臣から特別な監督を受けるものとされており、また、同法40条1項1号は、未公開株に係る取引勧誘が証券業協会の規則により原則として禁じられることを予定していると解される。)により、未公開株の一般投資家に対する投資勧誘は、「店頭有価証券に関する規則」6条及び8条に定める場合のほか、発行会社の法令順守状況を含む社会性、適時開示体勢の整備状況、財務諸表又は連結財務諸表に係る公認会計士又は監査法人の監査報告書において重要な注記がないこと等及び事業計画に収益性・成長性が認められること等を条件として指定されるグリーンシート銘柄に限られ、それ以外の未公開株の一般投資家への投資勧誘は禁じられていることからも明らかなように、我が国の証券取引制度においては、経営状態に関する適切な情報開示のない会社の株式は、証券取引の対象とすべきでないものとされているということができる。以上のとおり、日興グランダムが敢えて違法な無登録営業として株式の販売を行ったこと、特にそれがグリーンシート銘柄でもない正当な価格に関する情報を得にくい未公開株であること、結局、本件未公開株商法は、KFE株を除いては上場されず、KFE株も原告の買受価格を大幅に下回る価格で推移しており、本件取引における原告の投下資金の大半は回収不能となっていること、法制度上、経営状態に関する適切な情報開示のない会社は証券取引業の対象とすべきでないものとされていることなどを総合して案ずれば、後述のとおり、日興グランダムの代表取締役又は取締役として同社の営業に関与していたと認められる被告らとしては、本件未公開株の販売価格が正当なものであったことを積極的に立証しない限り、本件取引当時における本件未公開株の正当な価格は、もともとその代金額を大きく下回るものであり、その販売価格は、顧客がそれを正当な価格であると誤信することを前提とした詐欺商法によるものであったことが推認されるというべきである。」と判示している。
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8 コンチネンタル・ウェイ、フロンティア、コンチネンタル・エム・ケー・マネージメント(東京地判平成19年12月13日)
 「(証券取引)法が、国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的として制定され(証券取引法1条)、同法28条違反については、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、又は併科という罰則を規定していること、日本証券業協会が、未公開株式の取引が同法の目的に反するおそれがあるため、いわゆるグリーンシート銘柄以外の未公開株式の取引を自主規制していると解されることに照らすと、無登録業者によるグリーンシート銘柄以外の未公開株式の売買は、それ自体極めて違法性が高く、公序良俗に反する違法な取引であるというのが相当である。」と判示している。上記7判決と本判決は、取締法規と私法上の違法性の関係という問題に関しても興味深い。
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《解説》 証券取引、その他
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1 SMBCフレンド証券(東京地判平成17年7月22日)
 公務員である原告が相続を契機として泉証券に口座を開設し、半年ほど株式現物、中国株、日経225連動型上場投資信託などをして損失を出した後、1年3ヶ月程度の日経225オプション取引をし、3000万円の損失を受けたというもの。うち手数料が2500万円にのぼる。泉証券を承継したSMBCフレンド証券に対する損害賠償請求。
 判決は、オプション取引の特徴を検討した上で、「オプション取引は、金融工学等に基づいて構築された極めて複雑難解な仕組みとなっており、その仕組みを十分に理解することなく、あるいは、関連情報の収集分析能力を備えていない者が取引を行う場合には、もっぱら直感的な相場見通しを手掛かりとして、リスクの限定や回避を講じることなく、損失の可能性に対し無防備な取引を行い、その結果、予期しない多額の取引差損、手数料損等の損失を受ける可能性が少なくないものと認められる」として、他の投機取引にも増して適合性について慎重な検討が必要であると判示した。そして判決は、原告には株式取引等の投機取引について理解するための知識、経験、能力等はあったが、オプション取引について的確に理解し、的確な取引行為を行い得るほどの専門的な知識、経験等を有していたとは認められないとし、また、公務員として勤務していた原告には調査検討や独自の情報の収集分析を行い得る状況にもなかったとした。次いで判決は、説明義務に関し、「オプション取引の仕組み等を分かりやすく的確に説明するとともに、取引に伴う損失の危険性、手数料の負担等の損失に関する要因についても十分に説明する義務がある」とした上で、担当社員の説明はオプション取引のアウトラインに関する通り一遍の説明に止まるものであって、原告が上記の点について的確に認識し得たとは認められないとした(併せて、判決は、原告には投資取引について少なくとも平均水準の理解力があったとしつつ、それでも本件における説明程度では、複雑難解なオプション取引を理解して自己の判断で取引をこなすことは困難であるとも判示している)。以上から、判決は、適合性原則違反と説明義務違反による不法行為を肯定した(過失相殺5割)。
 オプション取引一般に関する判示内容は、従前の裁判例の流れに沿うものとして正当であるが、客観的数値から見て意図的な手数料稼ぎが強く疑われる事案であるのに、具体的な取引内容の問題に全く踏み込むこともなく、本件のような取引において過失相殺を5割するという結論は、疑問である。
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2 川研ファクター(東京地判平成18年12月27日)
「ニッパチ商法」と呼ばれる、証券金融、証券担保ローン付株式取引まがい商法。その商法自体に利益相反状況があり、被害者に利益を生じさせないことを前提に取引を行っていたとして損害賠償請求を認容した。
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